熱処理後の焼入れ鋼の加工: 実際に何が変わるのか
工具鋼部品の多くは、いまも軟らかい状態で加工し、焼入れし、その後に研削します。ハードミーリングはこの順序を変えます。先に熱処理を行い、その後で最終硬度のままマシニングセンタで仕上げます。研削の段取りがなくなり、変形をめぐる議論もなくなりますが、送りを遅くしただけの同じ仕事ではありません。
取りしろが仕事を決める
ハードミーリングは仕上げ加工です。58 HRCのブロックに2 mmの取りしろを残せば、インサートが壊れます。熱処理後の現実的な取りしろは、ミーリングで片側0.15-0.30 mmで、小さな形状ではさらに少なくなります。つまり、熱処理前の軟らかい状態での加工工程は、焼入れによる膨張も含めて、ハード加工の工程を前提に計画する必要があります。
図面を、軟らかい状態の加工しか見積らない工場に送った場合、この取りしろが最初に誤られます。それが分かるのは6週間後です。
工具: HSSではなくCBNとコーティング超硬
おおよそ50 HRCを超えると、ハイスは使えません。実用的な工具は次のとおりです。
- AlTiNまたはAlCrNコーティングの超硬ソリッド: 約60 HRCまで使える主力で、3D曲面にはボールエンドを使います。
- CBNインサート: 60 HRC以上と、穴や軸のハードターニングに使います。
- ネガすくい角、強いエッジ処理: 鋭いポジの刃先は、焼入れ鋼では一瞬で欠けます。
切込みは浅くなり、周速は上がります。機械は、びびりなくこれを保持できなければなりません。20年使った、摺動面の摩耗した機械では、主軸にどんな工具を付けても、60 HRCでRa 0.4の面は出せません。
馬力より剛性が重要
ハードミーリングで起きる不具合は、動力不足ではなく振動です。切削力は軟鋼の荒加工より小さく、仕上げを悪化させるのはたわみです。そのため、次のような工場が向いています。
- 熱的に安定し、よく整備された機械
- 工具の突き出しが短く、焼きばめまたはハイドロチャックを使用
- 薄肉部ではなく、肉厚部でクランプする治具
設備一覧の写真だけを見てハードミーリングを見積る工場の場合、ここは外から見えない部分です。
大量のクーラントではなく、エアブロー
断続的なハードミーリングに大量のクーラントを掛けると、CBNの刃先が熱衝撃で割れます。通常は、圧縮エアまたは微量潤滑(MQL)のミストを使った乾式切削を行います。CBNの仕上げ加工に大量のクーラントを使うと書かれた見積りは、理由を尋ねてください。
見積依頼に何を書くか
形状よりも価格を大きく変える記載が、図面に3行あります。
- 加工時の硬度: 「58-60 HRC、熱処理後に加工」は、「軟らかい状態で加工、焼入れは自社で実施」とは別の仕事です。
- 公差が実際にある場所: 穴1か所の±0.005 mmは問題ありません。全寸法を±0.005 mmにすると、検査時間が2倍になります。
- 機能面のみの表面粗さ: 全面に一律でRa 0.4を指定するのが、見積りが膨らむ最も一般的な原因です。
この3点に答えたうえで図面を送れば、3つの異なる案件を表す3つの数字ではなく、すべての工場から比較可能な見積りが届きます。