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熱処理変形: 応力除去、取りしろ、基準面の戦略

熱処理中に部品が動くことに、驚く人はいません。驚かれるのは、最終的なコストの多くが、炉に入れる前の判断で決まるという点です。

その判断は3つあります。どれだけ取りしろを残すか、応力除去を行うか、そして後でどの面から位置を取り直すか、です。

動きはどこから生じるか

メカニズムは2つあり、対策が異なるため、分けて考える価値があります。

相変態による体積変化。 オーステナイトがマルテンサイトに変わり、マルテンサイトはより大きな体積を占めます。どの部品も膨らみます。一般的な工具鋼では、線膨張でおおよそ0.1-0.2%の範囲で、残留オーステナイトの量と焼戻しによって変わります。ほぼ均一で、ほぼ予測できるため、計画に織り込めます。

熱勾配と残留応力による変形。 部品は不均一に加熱・冷却され、部位ごとに変態の時期が異なり、圧延、鍛造、荒加工の際に閉じ込められた残留応力が解放されます。これは均一ではなく、細部まで予測できるわけでもありません。板をポテトチップスのように反らせるのは、こちらです。

応力除去が対象とするのは、後者です。

応力除去と、荒加工がきっかけになる理由

圧延材や鍛造材のブロックは、内部応力を抱えて届きます。荒加工で不均等に材料を取ると、その応力のバランスが崩れ、ブロックが動きます。すぐに動くこともあれば、炉の中で動くこともあります。

通し焼入れする部品の標準的な順序は次のとおりです。

  1. 荒加工: 十分な取りしろを残します。大きなブロックでは、通常、片側2-3 mmです。
  2. 応力除去: 600-675 °Cに加熱し、断面25 mmあたりおよそ1時間保持して、徐冷します。部品はここで、害のない形で制御されながら動きます。
  3. 中仕上げ: 動いた分を修正し、熱処理後の本来の取りしろを残します。
  4. 焼入れ・焼戻し
  5. 仕上げ加工または研削

大きな部品や非対称な部品で、手順2を省くことは、炉から戻ったブロックが修復不能になる最も多い原因です。

すでに焼入れされ、仕上げ研削される部品については、荒研削の後に低温の応力除去、通常は焼戻し温度より25-55 °C低い温度で行うと、硬度に触れずに研削応力を除去できます。

取りしろはどれだけ残すか

工場が図面に最も記載してほしがる数値であり、最も欠けていることが多い数値です。

熱処理後の取りしろの目安は次のとおりです。

部品の種類 片側の取りしろ
小型で単純、空冷焼入れ鋼(A2、D2) 0.1-0.2 mm
中型ブロック、空冷焼入れ鋼 0.2-0.4 mm
大型の板(300 mm超)、空冷焼入れ鋼 0.4-0.8 mm
油焼入れ鋼(O1、S7の厚肉) 0.3-1.0 mm
薄肉または非対称の部位、どの鋼種でも 50-100%を加算

空冷焼入れ鋼は、油焼入れ鋼よりはるかに動きません。これがO1とA2の比較の中心的な論点です。空冷焼入れ鋼を選ぶほうが、油焼入れによる変形を削り取る費用を払うより、安く済むことが少なくありません。

避けたい失敗は2つあります。

取りしろが少なすぎる。 部品が残した量以上に動き、凹んだ部分が削りきれず、すでにかけた加工費もろともブロックがスクラップになります。

取りしろが多すぎる。 全面から1 mmの60 HRCの鋼を、ハードミーリングか研削で削り取ることになります。遅く、高価で、部品に熱も入ります。熱処理後の加工を参照してください。

基準面の戦略: 誰もが忘れる部分

最もコストがかかり、最も議論されない不具合があります。

2つの基準面から寸法を取った形状を持つ部品を加工します。熱処理に出し、戻ってくると、その基準面が動いています。平面ではなくなり、互いの直角度も崩れ、元の位置にありません。

工場は、仕上げに入る前に、基準を再設定しなければなりません。方法を指定していなければ、工場が選びます。工場の選択が、御社の公差の基準の取り方と違えば、すべての寸法が誤った位置から測定され、形状としては問題がないのに検査で不合格になります。

対策は次のとおりです。

熱処理後の基準を明示する。 注記の例: 「熱処理後、基準AとBを研削で再設定。両面に0.3 mmの取りしろあり」。

基準面には、他のどの面よりも多く取りしろを残す。 他のすべてがこの面を基準にするため、完全に削りきれなければなりません。

可能な限り、基準を大きく、平らで、肉厚の部分に取る。 薄いフランジ上の基準は、厚さ40 mmの部分の基準よりも大きく動きます。

犠牲基準を検討する。 熱処理後に部品の位置決めをするためだけに存在し、最後に除去される追加形状、たとえば加工したパッドや、リーマ穴のペアです。複雑な治工具では日常的な手法で、材料を費やす価値があります。

図面に何を書くか

4点を網羅した、短い熱処理の注記です。

熱処理
1. 荒加工、650 °Cで応力除去、断面25 mmあたり1時間、徐冷。
2. 58-60 HRCに焼入れ・焼戻し。二重焼戻し。
3. 熱処理後の取りしろ: 片側0.3 mm、基準AとBは0.5 mm。
4. 仕上げ加工の前に、基準AとBを研削で再設定。

4行です。焼入れ鋼の見積りが大きくばらつく原因となるあいまいさの大半を取り除き、30時間かけたブロックをスクラップに変える不具合も防ぎます。

この注記を図面に添えて見積依頼に送れば、各工場が同じ計画に価格を付けるため、見積りは直接比較可能になります。

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